■ - Vol12. おおみそかだよドラえもん -
「おおみそかだよドラえもん」を見た翌日の出来事を思い出した。
外人ハウスに住んでいたときの、おおみそかの日のことだった。
その年は、なぜか紅白でもなくレコード大賞でもなく、「おおみそかだよドラえもん」を見ていた。
のびたがお母さんに宿題やれだのうるさくしかられ、ジャイアンやスネオからはいじめられ、
「もしも電話」で「みんないなくなっちゃえー」と言ったら、翌日家にも街にも人一人いなくて
ほんとに一人ぼっちになって、もう誰でもいいから会いたいという気持ちになるというお話だった。
翌日起きてみると、50人くらいいる外人ハウスはやけに静まり返っていて、廊下にでても誰の姿も
見かけることはなかった。
ラウンジにもキッチンにも一人もいない。
外にでても、やはり静かで歩いている人はいなかった。
まさか、と思い半べそで、ひざがガクンガクン
いうくらい必死で自転車をこぎながら、駅の方に向かうと、犬の散歩をしているおじいさんが
一人見えた。
この見知らぬおじいさんと犬がどれだけいとしく思えたことか。
次第に、駅に近づくにつれ何人か歩いている人に出会いホッとした。
外人ハウスに戻ってみると、
キッチンに、私がふだん嫌っていたカナダ人がいて、笑顔でHelloと言ってきた。
私は心から笑顔でHello!と挨拶をかわした。
元旦なので、みんな実家に帰ったりして、めっきり人が少なくなっていただけらしい。
集団生活も長くしてると、だんだんうんざりしてきて、「あー、もうキッチン一人で使いたい」とか、
「ああ、この人嫌い」とか、「みんないなくなっちゃえ!」とか勝手なことを思ったりするものだが、
それ以来私がこのカナダ人を嫌うことは二度となくなり、二度と「みんないなくなっちゃえ!」
と思うこともなくなったのだった。
藤子不二夫さんが人々に伝えたかったことをここまで身を持ってかみしめた大人もなかなか
いないだろう(※いい大人になってからの出来事。。。)
そんな感じで、今回の旅以来、二度と日本人が一人もいない国へ一人で行きたいとは思わなくなった。
結局、クアラルンプールでも旅の最後まで一人も日本人に会うことはなかったのだ。
帰りのシンガポールの空港で、とうとう日本人を見かけたとき、飛びついてだきしめたくなったが、
警察につかまりたくなかったので、衝動はおさえた。