■天使の住む街

すると、席へ着いた私にまだあきらめがつかない運転手さんが 「一応、今泊まってるユースホステルの住所と日本の住所を渡してくれれば、 何とか会社に頼んですぐに返金手続きをしてもらって明日ユースホステルに 届けられるかやってみるから。もし、それで間に合わないようだったら、 日本の君の住所へ、必ず届くようにするから。」と大きな声で言ってきた。

「何か紙に住所を書いて。書くものはある?」と言うので、リュックの中を探し 始めると、な、な、なんとかれこれ私のせいで10分も出発が遅れているバスの 乗客たちが一斉に自分のかばんの中をゴソゴソと探し始めた。
そして、すぐ後ろの席の女の子が「あ、私ノートあるから、これをあげるわ。」 と自分の大学で使ってるらしい授業のいろいろ書いてあるノートを開いて ピリピリとその授業の内容が書かれているノートの端っこを破いて私にニッコリ 天使のような笑顔で紙を渡してきた。

もちろん、一斉にかばんをゴソゴソやった 他の乗客も、私のために書くものを探していたのだ。
女の子の隣のおばさんが 「これを使いなさい。」とやはりニッコリ笑ってペンを渡してきた。
信じられない光景だった。なんなんだこの街は!!どいつもこいつも天使のように やさしいではないか。。。 と驚きと感動を隠しきれず涙がちょちょぎれそうな中、住所を書いて運転手に渡した。

運転手は、それを受取ると 「本当に自分の不注意で、申し訳なかった。 必ずお金は返金するから。」 と相変わらず自分を責め続け謝ってきた。 “No,No, it's ok. It was my fault.”(いいんです、いいんです、悪いのは私の方ですから。) と言って、席へ戻った。

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