■10年後

それから10年後。
東京で、ポートランドに本社がある外資系の広告代理店で働くことになります。
そこは、クリエイティブで数々の国内海外での賞をとった人たちがいる雲の上の世界でした。

そこで、思いもよらぬ形で、叶わぬ夢だと思っていたことがかなうことに。
ある日、受付でいたずら描きで一緒に働いているクリエイティブのインタラクティブチームの3人の似顔絵を描いていました。
そこへやってきたアカウントの女の子に見せると、意外にだれか当ててもらえず、「えー、似てない!」と笑ったりしてました。
その後、自分の席に戻り、その3人と仲良しのポルトガル人のライターの女の子に見せると、「これ、栗みたい!」と栗みたいな顔に描かれたCD(クリエイティブディレクター)の顔を見て大笑い。

「彼、ぜったいいやがるよ!」と、その四角いふせんに描かれた3人の似顔絵をカラーコピーしてきて、そのクリエイティブディレクターのデスクに貼り付けておもしろがっていました。
そして、その3人が戻ってきたときのこと。。
なんと、意外にも栗そっくりな似顔絵を見て、気に入ってしまったらしく、「これを会社のブログにのせるぞ」ということに。

そして、その後ポートランド本社から来ていたインタラクティブのグローバルディレクターの講義をみんなで受けた後のこと。
そのグローバルディレクターが机にある似顔絵を見て、これまた気に入ってしまい、デジタルのデータはないか聞いてきました。
手書きだから、デジタルデータはないと言うと、「じゃあ、デジカメで写真を撮らせて」と言って、写真を撮ると帰国後、自分のブログに東京オフィスの様子の写真と一緒にその絵を載せてくれていました。
タイトルは"Are we not men?"。
なにせ、一人は栗。一人は、口がない。もう一人はまるかいてちょんちょん的な、小学生のらくがきのような絵だったので、第一線で活躍中の3人の顔がらくがきにされているのが面白かったのでしょうか。。。

その後、今度は東京オフィスの社長から、東京オフィスの新しくつくるホームページのスタッフ紹介で私が描いた似顔絵を使ってはどうかという話がやってきました。彼女もやはり、アメリカのポートランドの人でした。
スタッフは60人いたので至難のわざでしたが、自分の絵を世の中に出せるという、とうていかなうとは思っていなかった夢を意外な形でかなえることができたのです。

こうして、10年前、50州ある中から選んだオレゴンのポートランドとは、違う形で縁のある街となったのでした。

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